タバコを吸うのは好きだった.が,他人のタバコの煙のせいで演奏者が見えにくく,ストレスが溜まった.何故ホール内が禁煙ではないのだろうか.
雨の日を過ぎたタバコは心なしか湿っていて,酷くまずかった.再度鑑賞する気はとっくに失せていたので,市内に戻ることにした.
Richardと再開するのは久しぶりだ.その間,Lizは2つ,Richardは3つ歳を重ねていた.
LizとRichardはすでに一ヶ月分の宿泊料金を前払いしている.税金は滞納しているが.
「長く眠れた?」Lizは言った.Richardは言った.「君の方がね」
あるレコーディング
Richardは撞球に勤しんでいた.ルールはナインボール.9番のボールさえ入れれば勝ちというなんとも理不尽なルールだと思われがちだが,これはプレイヤーのレベルによって全く違う性質のものになる.プレイヤーがトップレベル同士だと,何の為にナインボールのルールで勝負するのかわからなくなるほどミスは皆無となる.
二人はプロ級の腕前だった.
勝負があると,そこにはほぼ必ずと言っていいほど賭けが存在する.二人の腕と実力の差(非常に均衡している)は皆に知れ渡っていた為,いつも賭けが成立していた.
Michiは初めてこの店に来たため,この賭けに興味を持ち,Richardに$500ほど賭けた.が,すれ違った男性の“実は出来レースだった”という話を小耳に挟む.真相を知ったMichiは抗議に出た.
店を追い出されたMichiは,ニューヨークのビル群を眺めている.